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「LGBTは思ったよりお金を落とさない」となったら……当事者が語るブームの行く末

LGBT当事者が語るLGBTのこと 第1回

LGBTを「認識してもらえる」社会に

 しかし、これは必ずしもそうとはいえないでしょう。ヘテロセクシャル(異性愛者)にも年収200万円から年収1000万円以上の人がいるように、本当に人それぞれです。

「LGBTは商業的にターゲットになる」という考えだけが先行すると、重要なのはあくまで「お客様」である高所得のLGBTだけということにもなりかねません。LGBTとは「お金を持っていて自社製品を買ってくれる人」であり、それ以外は尊重の対象にならないといった流れにならないかと不安にも思います。

 もちろん、人権が先でも、ビジネスが先でも、LGBTへの認知と理解が深まるのであれば、基本的には問題はないと思っています。

 ただ今のLGBTへの関心は「ダイバーシティの尊重がビジネスにつながっている」というよりも「商業的な観点からダイバーシティを尊重する」という流れが、あまりに強く出すぎているように感じます。

 もし労働人口が多いときであれば、おそらく日本企業はLGBTをビジネスのターゲットにしなかったのではないでしょうか。

 そう考えると「LGBTは思ったよりお金を落とさない」となったときに、果たして企業が今と同じような姿勢をとるのか疑問なところです。

 LGBTが注目されることは、当事者として大変喜ばしいです。

 例えば、この記事を読んでいる異性愛者のあなたは、自分の周りにLGBTがいると想像したことがあるでしょうか。

 これまで多くの異性愛者にとって、LGBTは「自分の周りにはいないもの」として思われていたのではないでしょうか。

 テレビに出ているタレントのように、どこかにはいるけれど、近くにいるわけではない。そんな認識だったのではないかと思います。

 それが、ようやく存在を「想像してもらえる」ようになってきているのではないかと、当事者である私は感じています。

 しかし、あくまで「想像してもらえる」であって、まだまだ自分の友人や家族がLGBTかもしれない、と「認識してもらえる」までには到達していないと思います。

 実際、私自身、LGBTであることを会社でカミングアウトできていません。カミングアウトすることに、周りから避けられるといったデメリットしか感じられないからです。

 商業的な「お客様」としてだけではなく、LGBTがなんの気がねもなく会社で働き、街中で手をつなぎ、この日本で生きていけるようになることを私は切に願っています。

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モリモト ミライ

LGBTでADHD(注意欠陥多動障害)。



ダブル・マイノリティの視点で世の中を批評する物書き。



ADHD、LGBT、その他悩めるすべての人へのブログ「ミライ系学習帳」を執筆中。



ブログ→morimoto-mirai.com



Twitter→@morimotomirai


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